正座すること、4時間
停電対策を売った私が、
停電させた夜の話
残量が心配だから、
電気はがまんしよう…
誰も使っていないのに、
減っていく…?
550万円も
払ったんだぞ!
停電でも安心だって
言ったよな
こんな設備いらない!
持って帰れ!
停電戸数・復旧時間の出典:資源エネルギー庁「『台風』と『電力』」(確認日 2026-08-25)。まんがの場面は寺嵜の実体験に基づく再現です。
この夜の話を、文章でくわしく読む(約5分)
2019年9月9日の未明、台風15号が千葉を通りました。
その日から、千葉は長い長い停電に入りました。夜になると、町から灯りが消えました。
あのとき千葉で実際に起きたこと
最大 約93万戸が停電(千葉県を中心に)
約280時間ピーク比99%解消までにかかった時間(約12日)
出典:資源エネルギー庁「『台風』と『電力』」(確認日 2026-08-25)
私は、太陽光と蓄電池を「売る側」の人間です。
停電の中、設置させていただいたお客様のお宅を回りました。「うちは蓄電池があるから大丈夫」。そう言ってもらえるはずでした。
そのお宅では、家族みんなが我慢をしていました。蓄電池の残量が心配で、照明をつけるのも我慢した。エアコンもつけなかった。冷蔵庫と、最低限の灯りだけ。暗い部屋で、早めに布団に入ったそうです。
それなのに、夜11時ごろから、モニターの残量が急激に減っていきました。誰も、何も使っていないのに。
翌朝4時。蓄電池は空になり、
その家は「停電対策をしたのに」停電しました。
あの夜、蓄電池に起きていたこと
「550万円も払ったんだぞ」
「停電でも安心だって言ったよな」
「こんな設備いらない! 持って帰れ!」
私は正座をして、4時間、ただ話を聞くことしかできませんでした。言い返す言葉が、ひとつもなかったからです。カタログには確かに書いてありました。「普段の暮らしと変わらない生活ができます」。その言葉をそのまま口にして、契約をいただいたのは私です。停電のわずか数時間のために、250万円の蓄電池を入れたことになってしまった。怒って当然です。
翌朝のニュースでも流れていました。「蓄電池がうまく動かなかった」「太陽光の自立運転コンセントの使い方が分からなかった」。せっかくの災害対策設備が、いざという日に機能しなかった家が、千葉にはたくさんあったのです。売る側の誰も、停電の夜に何が起きるかを、本当には知らなかった。
犯人は、エコキュートでした。深夜、家族が寝静まったあと、大量の電気でお湯を沸かす。オール電化の「当たり前」が、停電の夜には蓄電池を空にする。恥を承知で書きます。蓄電池の容量(kWh)と、エコキュートが1日にお湯づくりへ使う電力(kWh/日)。電気の仕事を20年以上やってきた私は、この2つの数字を突き合わせて考えたことが、ありませんでした。
だから、自分の家で測りました。
夜にこれだけ使えば、蓄電池が朝まで持たない家があるのは当然でした。カタログの「安心」と、現場の現実。その差に、売る側も買う側も、気づいていなかったのです。※給湯の消費電力は機種・年式・湯量・季節・設定で大きく異なります。だから「わが家の数字」を実測で確かめることが大切です。
順番が、すべてでした。まず、使う電気を減らす。それから、つくる。ためる。夜に使う。いちばん地味な「省エネ」こそ、いちばんの停電対策だったのです。私はあの日から、夜のお湯づくりを深夜電力だけに頼らない提案(ガス併用ハイブリッド給湯)に切り替えました。数年後、「昼、太陽の電気でお湯を沸かす」おひさまエコキュートが生まれ、いまはそれも選べます。
夜沸かすお湯を、昼に沸かす。たったそれだけで、深夜の消費電力はぐっと減ります。蓄電池は朝まで持ちやすくなり、朝日が昇ればまた充電と発電が始まる。あの夜のお客様の悔しさは、いまなら順番の設計で防ぎやすくなりました。
あなたの家でも、こう思っていませんか
- 「大容量の蓄電池なら安心」→ 何を残すかを決めなければ、大容量でも朝まで持たない家があります
- 「停電になれば自動で切り替わる」→ 機種と配線で違います。どの回路に電気が行くか、確認したことはありますか
- 「うちは蓄電池を入れたから、もう大丈夫」→ あの夜のお客様も、そう思っていました

