Guide B5 / Blackout

蓄電池をつけたのに、停電した夜に使えなかった家

蓄電池があっても、停電の夜に使えないことがあります。故障ではありません。選び方と、設定と、使い方で起きます。
2019年の台風15号で、千葉県では最大およそ93万戸が停電しました。復旧まで数日かかった地域もあります。あの夜に何が起きたかから逆算して、決めておくことを3つにまとめました。

2019年9月、千葉。私がその家にいた夜のこと

寺嵜忠弘の実話

「550万円も払ったんだぞ」
私は正座をして、4時間、ただ聞いていました。

先に書いておきます。この設備を販売したのは、私ではありません。売ったのは元請けの会社で、私は下請けとして納品と工事を担当した側です。それでもその日、私は「専門家」としてその場へ連れて行かれ、矢面に立たされました。

2019年9月9日の未明、台風15号が千葉を通りました。千葉県では最大およそ93万戸が停電し、ピーク比99%の解消までにおよそ280時間(約12日)かかりました。(出典:資源エネルギー庁「『台風』と『電力』」確認日 2026-08-25)

停電の中、工事をさせていただいたお宅を回りました。太陽光300万円、蓄電池250万円。合計550万円のお宅です。「うちは蓄電池があるから大丈夫」。そう言ってもらえるはずでした。

そのお宅では、家族みんなが我慢していました。残量が心配で、照明もつけない。エアコンもつけない。冷蔵庫と最低限の灯りだけで、早めに布団に入ったそうです。それなのに、夜11時ごろからモニターの残量が急に減っていきました。誰も、何も使っていないのに。

22:30家族が就寝。残量はまだ十分。「これなら朝まで持つね」
23:00頃エコキュートが、いつも通り静かに沸き上げを開始。蓄電池の電気で。
翌 4:00蓄電池が空に。家じゅうが真っ暗になる
朝太陽光が発電を始める前に、力尽きていた。残量さえ持てば、朝日とともに充電できたのに

「550万円も払ったんだぞ」

「停電でも安心だって言ったよな」

「こんな設備いらない! 持って帰れ!」

言い返す言葉が、ひとつもありませんでした。カタログには確かに書いてありました。「普段の暮らしと変わらない生活ができます」。その言葉を、売る側も、納める側も、誰も疑っていませんでした。工事をした私も、です。

犯人は、エコキュートでした。深夜、家族が寝静まったあとに、大量の電気でお湯を沸かす。オール電化の「当たり前」が、停電の夜には蓄電池を空にする。恥を承知で書きます。蓄電池の容量(kWh)と、エコキュートが1日に使う電力(kWh/日)。電気の仕事を20年以上やってきて、私はこの2つの数字を突き合わせたことがありませんでした。

だから、自分の家で測りました。

1日 約20kWh設置から10年を超えたわが家のエコキュートが、お湯づくりに使っていた電力(当時の寺嵜宅での実測)。多くの家庭用蓄電池の容量より大きい数字です。
※機種・年式・湯量・季節・設定で大きく変わります。だから「わが家の数字」を実測で確かめます。

順番が、すべてでした。まず、使う電気を減らす。それから、つくる。ためる。夜に使う。あの日から私は、夜のお湯づくりを深夜電力だけに頼らない提案に切り替えました。数年後、昼に太陽の電気でお湯を沸かすおひさまエコキュートが生まれ、いまはそれも選べます。

夜沸かすお湯を、昼に沸かす。それだけで深夜の消費はぐっと減り、蓄電池は朝まで持ちやすくなります。
→ おひさまエコキュート16機種を見る

停電したら、まずエコキュートのブレーカーを落としてください

あの夜から分かったこと・いちばん大事

蓄電池があるお宅では、停電中もエコキュートが夜中にお湯を沸かし始めます。

蓄電池がないお宅では、この問題は起きません。停電すればエコキュートも一緒に止まるからです。起きるのは、蓄電池があるお宅です。蓄電池が自立運転で電気を送っているあいだ、エコキュートは「停電している」ことを知りません。タイマーどおり、家族が寝ているあいだに沸き上げを始めます。

約20kWh 対 5.7〜17.1kWh左:エコキュートが1日にお湯づくりへ使う電力(当時の寺嵜宅の実測)。右:当サイト掲載の家庭用蓄電池の容量。夜のお湯づくり1回で、蓄電池は空になり得ます。

停電したら、明るいうちに分電盤の「エコキュート」「給湯」のブレーカーを落としてください(屋外に専用ブレーカーがあるお宅もあります)。タンクに残っているお湯はそのまま使えます。新しく沸かさなくなるだけです。
復旧したら、真っ先に戻してください。戻し忘れるとお湯が出ません。

ただし機種によって停電時の扱いが違います。凍結防止のため通電を残す設計のものもあります。だから「今すぐ全員落としてください」とは申し上げません。停電が来る前に、ブレーカーの位置と、ご自宅の機種の停電時手順を確認しておいてください。暗い中で説明書を探すことになるのが、いちばん困ります。型番の写真を送っていただければ、こちらで調べてお返しします。

そもそも、夜に沸かさなければ起きません。昼に太陽の電気で沸かすおひさまエコキュートなら、停電の夜に蓄電池の電気を持っていくことがありません。
→ おひさまエコキュート16機種を見る

① 特定負荷で、生かす回路を間違えていた

特定負荷型は、工事のときに決めた回路だけが生きます。
よくあるのは、1階の冷蔵庫と居間だけを生かして、寝室のエアコンを外していたという選び方です。夏の停電では、ここが効きます。
決めるのは契約前です。当社は、生かす回路を紙に書いて確認してから工事に入ります。
→ 全負荷と特定負荷のちがい

② 自立運転への切替を、誰もやったことがなかった

停電時に自動で切り替わる機種と、手動でスイッチを操作する機種があります。
暗い中で、はじめて説明書を探すことになります。引き渡しのときに、実際に一度切り替えてみる。これだけで違います。
当社は、工事の最後にご家族の前で1回やってみるようにしています。

③ 太陽光の「自立運転コンセント」を知らなかった

蓄電池がなくても、太陽光があれば、停電中の昼にコンセント1口分(一般に1500Wまで)が使えます。パワコンの近くにある自立運転用のコンセントです。
これを知らずに、停電の昼を何もせず過ごした家がありました。場所と使い方を、いま確認しておいてください。

あの夜のために、いま決めておくこと

よくある間違い

「蓄電池をつけたから大丈夫」がいちばん危ない考え方です。停電の夜に困るかどうかを決めるのは、容量ではなく回路の選び方と、操作を知っているかです。
当社は、この3点を契約前に確認する順番にしています。売ってから説明するのでは遅いからです。

1問ずつ答える

1停電のとき、いちばん困るのは
2太陽光はありますか
3いま蓄電池をお持ちですか

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迷ったら写真2枚

寺嵜忠弘

いまお持ちの蓄電池でも構いません。本体と分電盤の写真があれば、停電の夜に何が生きるかをこちらで確認してお返しします。

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